設備投資に対して、その投資に見合った効果、すなわち利益を確保できない場合、その償却費が重く経営にのしかかり、経営の俊敏さが失われていきます。
投資対効果は、経営の将来を見据えて充分に、慎重に、かつ大胆な見極めが必要で、ごく単純に考えれば、投資額を上回る利益を回収できればよいのです。具体的計算方法は専門書にゆだねるとして、この投資対効果の基本的考え方についてお話しましょう。

投資対効果は、投資に対してどのようなプロセスを得て、利益を回収できることなのでしょうか。

ここに「目的意識」「定量化」がない投資はうまくいきません。

経験的にまずはQCDの観点から効果を考えるべきです。

  • Q(品質):不良率が○%→□%に減少する。それによる損失コストが△円・・・
  • C(コスト):作業人員が○人減る。それによる人権費削減コストは△円・・・
  • D(納期):製品リードタイムが○日減る。それによる仕掛かりなど無駄なスペースの削減による削減コストは△円・・・

「言われなくても分かります。」と言われるほど、すごく単純なことです。ですが、いつのまにやら「目的」がすり替わり、そのすり替わった目的に沿った出来レースな「定量化」となっていることがよくあります。

ロボットを導入しましょう。ロボットは安全柵で囲わねばなりません。安全柵で囲まれたその空間は他に転用できません。場所代という固定費が失われているのです。その失われた固定費を上回る効果があるのでしょうか。
目的がいつの間にやら「ロボットを導入すること」にすり替わっているかもしれません。ロボットを使用せず、コンパクトな専用機としたほうが効果が高いかもしれませんね。

とにかく人手が足りないので、とても速い設備を入れます。しかし、実際は資材の投入やらオペレートやらで作業人員が減っていない。リードタイムは減りますが、固定費は減りません。償却費は加算されます。製品が小さく、変動費が安い場合、かえって損をしていることがあります。
目的がいつの間にやら「速い設備を導入すること」にすり替わっているかもしれません。速い設備ではなく、確実に作業を補完する半自動機したほうが効果が高いかもしれませんね。

さらに昨今は、効果を明示できない投資が増加しています。ものづくり技術の成熟に従い、QCDへの効果が明示できる分かりやすい投資よりも、具体的な効果(利益など)を明示しにくい投資、たとえば、ビックデータの活用やICT技術などが増加しています。

ビッグデータの活用がしたいので、監視カメラ増強の投資をします。さて、どんな効果が期待できるでしょうか。
SNSを用いたコミュニケーションツールに関する投資をします。コミュニケーションがよくなるからどんな効果が期待できるのでしょうか。
投資の初期から、これらの効果を明示することはなかなか困難です。