超高齢化社会に立ち向かうために

我が国の「平均寿命」は世界一で、平均寿命と健康寿命の差(日常生活に制限のない期間)は、男性 約9年、女性 約13年です(平成22年)。今後、平均寿命の延伸に伴い健康寿命との差が拡大し、医療費や介護給付費の多くを消費する期間が増大することが予測されています。
一方、死因別死亡割合の経年変化は、がんや循環器病などの「生活習慣病」が増加し、さらに、「寝たきり」や「痴呆」のように、高齢化に伴う障害も増加しています。これらの疾患は、身体の機能や生活の質を低下させ、健康寿命が短くなります。今後は、治療だけでなく、予防によって、個人が継続的に生活習慣を改善して日常生活の質を維持し、積極的に健康増進していくことが重要な課題です。
※参考:健康日本21 第1章 我が国の健康水準 第1節 超高齢少子社会日本の健康課題

そこで、厚生労働省が「地域包括ケアシステム」なる政策を提唱しています。
『団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。』
『地域包括ケアシステムは、保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要です。』

医療・介護については、情報の統合や遠隔医療、在宅医療による介護従事者の負担増など問題はありますが、問題が明確であるため、それなりの問題解決が図られることが期待できます。
予防については、どうでしょうか。問題が明確でしょうか?

薬局の役割

国は、予防の役目を薬局に託しました。院内処方に比べ3倍ほどの費用を出して、病院と別で店舗を構えることで、高齢者がやってきてコミュニケーションし、予防や生活支援がなされ、健康寿命が延伸されることを期待したはずです。
薬局はその期待に応えられたでしょうか。医薬分業を推進した結果、病院前に乱立する薬局。。。薬局は薬を売ってなんぼです。薬が売れなくなる予防を積極的に薬局がするでしょうか。。?

高齢者の健康志向と問題点

高齢者の45.8%が日常的に健康食品を利用※しており、健康食品、健康器具、健康な体操など健康増進に積極的です。インターネットを使用する高齢者も増加傾向(5割以上※)にあり、情報も手軽に入手できるようになりました。しかし、それらが本当に健康増進に役立っているのかを定量的に自覚できないうえに、信頼性が低い情報も反乱しており、多くの情報から有用な情報を選択することは困難で、健康被害、購入にかかわるトラブルが後を絶ちません。
一般に有効性に関する情報は、販売元の宣伝や口コミが多く、安全性に関する情報は、行政機関や保健医療関連の専門医、ドラッグストアの薬剤師などで、有効性と安全性の情報経路が別でありかつ分断されていることが問題です。
高齢者は健康でありたいと考える一方、健康増進法の情報や実践方法、そしてフィードバックが適正に行われていません。一番大きな問題は、自分の健康状態が即時にわからないことです。自分の健康状態を定量的に知るためには、血液検査や特殊な機器を用いる手法がいまだに多く、どうしても数値が知りたい高齢者は病院やクリニックに行かざるを得ないのが現状です。費用負担、交通手段の不足、診察時間がかかるなど様々な問題があり、気軽に行けるところではありません。
※食衛誌Vol.58,No.2 高齢者における健康食品の情報源に関する調査

情報化社会と高齢者をつなぐ

健康増進には、三大要素である「栄養」「運動」「休養」と併せて、「ストレス」などを含めて、現在の自分がどの程度健康なのかをリアルタイムにかつ簡単に知ることが必要です。そして、高齢者が、自分の健康状態から、健康の維持方法を見つけ、それを積極的に実行することが必要です。
現在ある情報技術を用いれば、自分の健康状態を即座に知ることは難しくありません。そして、健康を維持するためのたくさんの健康食品や健康増進方法、健康器具その他多くの健康コンテンツが提供されています。しかし、高齢者がこれら情報やコンテンツを正しく選別し、適正に使いこなすことができるのか。加齢に伴って、自ら良いものを選択することがますます困難になっていきます。

ICT/IoT活用でセルフケアの属人性の回避に解を見つける

現在、介護、薬局、病院における高齢者へのセルフケアは、肉体労働でかつ属人的な事業形態です。いずれ人口の1/3が高齢者になる日本で、属人的なセルフケアは人材不足で破綻します。
セルフケアにおける肉体労働の省人化/省力化は、もう少し技術革新が必要ですが、まだまだ動ける予防可能な高齢者に対して、情報提供の観点からICT/IoTを活用し、属人的な情報提供や指導を回避して積極的に予防してもらうことは可能ではないかと考えています。
高齢者への情報提供は、インターネットだけでは足りません。仮想と現実、すなわちインターネットとコミュニティを活用し、高齢者がコミュニティ(現場)に集まり、正しい情報伝達と選択がなされ、積極的な予防を行う状態が必要です。
いかに、高齢者に正しい情報を提供し、適正に使いこなしてもらうか。結局のところ、活発に情報を得る方法は、現場すなわち井戸端(コミュニティ)でコミュニケーションすることが最適なのではないかと考えています。ただし、口コミで正しい情報が伝わるとはかぎらない。そこで、インターネットをはじめとしたICT/IoTの技術(仮想)と現場(現実)を上手くつなぐコミュニティの育成が必要です。

予防を生業とする職業「エルダリーヘルスメディケーター」

このようなコミュニティ事業の運営は、ICT/IoTの仕組みを包括的に利用し、そのソリューションを高齢者のセルフケアに集中投入できる専門の事業者が、市町村や都道府県を引っ張っていくことによって、確実な育成と拡散が実現できると仮説を立てています。

つまり、予防を生業とする職業が必要だ。と思います。「エルダリーヘルスメディケーター」(私が作った造語)です。

健康寿命を延ばすためには、医療と介護ではだめです。予防によって、自主的に健康(セルフケア)になるしくみを大規模に包括的に確立することが、急務であると考えています。
そこで、高齢者に正しい健康情報を伝えるための無料のコミュニティを育成し、コミュニティに来たくなる。来るために動く(必然的運動)。来て新たな情報を得る。このコミュニティで情報取得、状態把握、実行のサイクルを確立する実行の場(きっかけ)を提供していくことで、超高齢化社会の一つの解が得られるのではないかと考えています。

さてどうするの?

「エルダリーヘルスメディケーター」のプランをピッチコンテストで応募しましたが、不採用になってしまいました。以下が実現イメージになります。