「安全第一」

安全を決して怠ってはいけません。
しかし、生産設備を構築する上で、安全性と運用性の両立は非常に難しい問題です。

まず、安全は本質的安全を追及します。仮に人が駆動部に接触したとしても、人への危害が発生しないような設計、例えば駆動源の馬力を落とす。過大な力が加われば切れる機械式クラッチを用いる。慣性力を小さくするために軽くする。などです。
しかし、本質的安全が実現出来ず、どうしても人への危害が避けられないリスクが存在する場合、非常停止ボタンを設置するなどの防護策を取ります。

この、非常停止後の運用をどれだけ考えているかが、安全性と運用性を両立させるポイントです。

非常停止は文字通り非常時に生産設備を停止させることです。通常、非常停止ボタンを押した際は、瞬時に生産設備を止めて人を守ります。
しかし、運用性を考えない非常停止は、非常停止後の生産設備内の仕掛かり商品を全て廃棄し、かつ復帰に時間がかかる。などといった煩雑な事態が起こります。

この様に非常停止後の復帰が煩雑であると、作業者は、非常停止を押してしまったら、復帰に多大な時間がかかる。迷惑がかかる。と考え、心理的に非常停止が押しづらくなります。これにより、防護策が働きにくくなり、安全性に対するリスクが増加してしまうのです。

通常、生産設備は、非常停止後に仕掛かり品を取りだし、設備の原点復帰をして、再度通常運転になりますが、非常停止でなりふり構わぬ位置で各稼働部品が停止していますから、原点復帰の順番を間違えると機構部が干渉したり、変なインターロックがかかったりして、復帰出来なくなることもあります。また、非常停止後の復帰直後にいろいろなタイミングが合わず、不良品が出来てしまうなどといったことも起こります。

ですので、生産設備の総合的な試運転の際に、非常停止後の運用について時間をかけて確認していきます。様々なタイミングで非常停止ボタンを押し、原点復帰、再起動を繰り返しながら、どこで押しても安全に設備が停止し、素早く復帰出来て、再起動後に不良品が出ない。そんな「気軽に押せる非常停止」を目指します。

それにより、心理的に押しやすく、生産設備を壊さず、不良品を出さない非常停止シーケンスが出来上がります。決して安直に復帰が大変だからと、非常停止ボタン押下後に生産設備をサイクル停止させることはしてはなりません。
その駆動部に人が巻き込まれているのに、サイクル動作をされたら・・・。想像もしたくありませんね。

また、非常停止ボタンの配置にを気を配ります。人と駆動部が接近する場所で、リスクが高く、人の手が届くところを想定します。いざという時に非常停止ボタンが手の届く範囲に無い。などは避けるべきです。