モジュール化
モジュール、モジュール化といった言葉はよく聞きますが、直訳すると「大きなひとくくりにすること」を意味し、かなり広範囲な意味です。
ではその本質とは何でしょうか。
まず、ものづくりにおける過程を考えた場合、モジュール化対象は以下に分類することができます。
製品のモジュール化
パソコンなどが良い例です。マザーボード、CPU、ハードディスク、メモリ、電源、その他オプションを別のメーカから買ってきて、ほしいスペックになる様に組み合わせて組み付ける。特に難しい調整は要りません。電源を入れて、OSをインストールすればとりあえず使えます。
作る側は、ただ単に組み合わせているだけですが、これら部品の連結ルールがオープンで定まっているために実現できるのです。
工程・作業のモジュール化
多種製品や大量製品において、共通する一定の工程や作業が存在します。上のパソコンの例では、電源は共通で全く同じ工程であるとか、CPUはメーカは違えどピンの数は同じで、全て同じ作業であるなどが考えられます。このような共通する工程・作業を集めて1つのくくりとし、作業標準化して集中的に教育し、品質を安定させたり、流れ作業において同じ作業だけを繰り返させてミスを減らすなどを実施します。
生産設備のモジュール化
工程・作業のくくりがかなり大がかりでかつ大量、素早く、正確さが要求される場合、生産設備導入を考えることになります。
昨今の生産設備は電装系いわゆるシーケンサやセンシング技術が非常に発展しているため、製品に物理的作用を施すハードウエア以外の動きの制御や判断は、ソフトウエアが主となってきています。これにより、ハードウエアはより単純化される傾向にあり、設計工夫の結果、ハードウエアがモジュール化され、組み合わせ性が発展し、多品種対応が可能となったり、コストダウンができたりしています。
そうなってくると、ソフトのモジュール化がキーとなります。
一方、ソフト台頭で良いのか?という議論もあります。こちらを参照ください。
モジュールというものは、製品であれ、工程・作業であれ、生産設備であれ、それ単体である機能(価値)を持ちます。そして、その機能をいろいろ組み合わせていくとシステムとなり、顧客が求める機能(価値)に発展していきます。ここでポイントとなるのは、モジュールを連結する部分の決まりです。
- 自社だけなのか(ブラックボックス化)
- 業界標準なのか
- グローバル標準なのか
により、作り手が取る戦術は違ってきます。当然、その市場が魅力的であるほど、新手のモジュール開発は加速し、弱肉強食の市場になります。
また、その連結ルール自体も進化していきます。どこが主導権を握るかで切磋琢磨するのです。
さて、モジュール化は最近の流行り言葉ですが、限界はあるのでしょうか。それは、そのモジュール自体が「物理限界」を超えるかどうかで決まります。
産業革命をはじめとして、人は物理限界を超えてきました。
モジュールで各機能が加速的に発展するといずれ物理限界に到達します。物理限界に到達すると、その機能をさらに上げるためには、摺り合わせによる機能達成が必要となってきます。そしていずれ誰かがその限界を超える。物理限界を超えたらまた、モジュール化が加速していく。そんな繰り返しではないでしょうか。
ムーアの法則に基づき進化した半導体は、今まさに量子力学に基づく物理限界、言いかえればモジュール化の限界を摺り合わせにより超えようとしています。超えた先にどんな世界が待っているのでしょうか。楽しみですね。
<参考書籍>
青木昌彦 安藤晴彦(2002)『モジュール化 新しい産業アーキテクチャの本質 経済産業研究所・経済政策レビュー 4』 東洋経済新報社 334P