Archives: 2015年6月12日

モジュール化

モジュール、モジュール化といった言葉はよく聞きますが、直訳すると「大きなひとくくりにすること」を意味し、かなり広範囲な意味です。
ではその本質とは何でしょうか。

まず、ものづくりにおける過程を考えた場合、モジュール化対象は以下に分類することができます。

製品のモジュール化

パソコンなどが良い例です。マザーボード、CPU、ハードディスク、メモリ、電源、その他オプションを別のメーカから買ってきて、ほしいスペックになる様に組み合わせて組み付ける。特に難しい調整は要りません。電源を入れて、OSをインストールすればとりあえず使えます。
作る側は、ただ単に組み合わせているだけですが、これら部品の連結ルールがオープンで定まっているために実現できるのです。

工程・作業のモジュール化

多種製品や大量製品において、共通する一定の工程や作業が存在します。上のパソコンの例では、電源は共通で全く同じ工程であるとか、CPUはメーカは違えどピンの数は同じで、全て同じ作業であるなどが考えられます。このような共通する工程・作業を集めて1つのくくりとし、作業標準化して集中的に教育し、品質を安定させたり、流れ作業において同じ作業だけを繰り返させてミスを減らすなどを実施します。

生産設備のモジュール化

工程・作業のくくりがかなり大がかりでかつ大量、素早く、正確さが要求される場合、生産設備導入を考えることになります。
昨今の生産設備は電装系いわゆるシーケンサやセンシング技術が非常に発展しているため、製品に物理的作用を施すハードウエア以外の動きの制御や判断は、ソフトウエアが主となってきています。これにより、ハードウエアはより単純化される傾向にあり、設計工夫の結果、ハードウエアがモジュール化され、組み合わせ性が発展し、多品種対応が可能となったり、コストダウンができたりしています。
そうなってくると、ソフトのモジュール化がキーとなります。
一方、ソフト台頭で良いのか?という議論もあります。こちらを参照ください。

モジュールというものは、製品であれ、工程・作業であれ、生産設備であれ、それ単体である機能(価値)を持ちます。そして、その機能をいろいろ組み合わせていくとシステムとなり、顧客が求める機能(価値)に発展していきます。ここでポイントとなるのは、モジュールを連結する部分の決まりです。

  • 自社だけなのか(ブラックボックス化)
  • 業界標準なのか
  • グローバル標準なのか

により、作り手が取る戦術は違ってきます。当然、その市場が魅力的であるほど、新手のモジュール開発は加速し、弱肉強食の市場になります。

また、その連結ルール自体も進化していきます。どこが主導権を握るかで切磋琢磨するのです。

さて、モジュール化は最近の流行り言葉ですが、限界はあるのでしょうか。それは、そのモジュール自体が「物理限界」を超えるかどうかで決まります。
産業革命をはじめとして、人は物理限界を超えてきました。
モジュールで各機能が加速的に発展するといずれ物理限界に到達します。物理限界に到達すると、その機能をさらに上げるためには、摺り合わせによる機能達成が必要となってきます。そしていずれ誰かがその限界を超える。物理限界を超えたらまた、モジュール化が加速していく。そんな繰り返しではないでしょうか。

ムーアの法則に基づき進化した半導体は、今まさに量子力学に基づく物理限界、言いかえればモジュール化の限界を摺り合わせにより超えようとしています。超えた先にどんな世界が待っているのでしょうか。楽しみですね。

<参考書籍>
青木昌彦 安藤晴彦(2002)『モジュール化 新しい産業アーキテクチャの本質 経済産業研究所・経済政策レビュー 4』 東洋経済新報社 334P


サーボかカムか

昨今、シーケンサなどのソフトウエアの台頭により、昔はカムで実施していた複雑な動きの繰り返し、超高速動作が、サーボモータに置き換わり、カムと全く同じ動きが可能となるソフトが出現しています。
私も設備導入をしていく中で一番迷うのは、このポイントです。確実な動き、間違えない動きを要求するときに、はたしてサーボが有効なのか?バグが起こらないのか?実際、複雑にソフトウエアで動作するサーボを用いた設備の信頼性の確保や作り込みは、地道で長いデバック作業により支えられています。
こう考えると、カムの方が物理的に明確であるため、デバックが不必要で効率的な気がしますね。ただ、ソフトウエアはプログラムですから容易に変更できて優位である背景から、サーボモータが優先的に採用されます。

それにより、カムが設計できる技術者は減っています。

どこにサーボモータを使い、どこにカムを使うか。どちらが有効か?ここが設備屋の腕の見せ所です。互いの特性を見極めて使い分けねば良い設備はできません。いわばハイブリッドですね。
経験的に、同期はメインモータで取らせて、重量部(メインコンベア)などをカムで駆動し、バリカムとかでタイミングをサーボに出してやるようなやり方が一番バグは少なくなりますかね。

メインがサーボでそのサーボのタイミングを別のサーボが取って、どこかにセンサーがあって・・・などと、ソフトウエアによるインタロックが多重になってくると、非常停止後の復帰など、イレギュラーな動きをするときに、電気屋さんが悲鳴を上げます。

成熟したカム技術と、台頭するサーボ技術。カムをサーボモータで回すようなことも面白いかもしれませんね。微妙なタイミングのずれをカムの作り替えではなく、サーボの回転速度で制御すれば、よりカムのモジュール化が進んで良いかもしれません。そうなると、バリカムのタイミングが良くわからなくなっていくのですが。

もしくは、より視覚的に接続機器の状態が分かって、バグっている個所が一目瞭然となるようなソフトウエアが登場するかもしれませんね。

サーボ、カムの長所短所

サーボ
・プログラムにより規定の動きが実現できる
・即、動きの変更が可能
・高速になると動きがずれる
・実は省エネでない
カム
・イニシャル/ランニングコストが小さい(消費電力が小さいため、モータも小さい)
・サーボに比べて電気配線工数約1/10
・見れば動きが分かる
・動きの変更が出来ない(カム作り替え)

サーボの選択

動き/スピード/ストロークを変化させる必要がある場合
→サイズチェンジ、品種変更がある

モーションコントロール(サーボ)
必ずフィードバックが入る。つまりブレーキや逆電流が入る。必然的にモータが大きくなる。
負荷やイナーシャ(慣性力)が多くなる/速度が速くなるほど、実際の動きはズレる。ズレを是正するためにモータがより大きくなる。この悪循環

サーボを使う良い例

ロールのピッチ送り
ロールの送りは、延び、滑り、ローラーの摩耗/偏芯、などにより経時により、数mmの変化がおこる。送りを多少変更したい場合が出てくる。こういった場合はサーボにより変更できる方が都合が良い。

カムを使う良い例

経時や状況により動きに変化が出ない工程
切る、折る、取る


アイディアを守る

設備投資は問題解決です。
問題解決の過程でアイディアが発生する場合もあります。

さまざまな設備メーカさんと接することが多くあります。そんな中で感じるのは、世の中の多くの生産設備は中小企業さんが担っており、その中小企業さんは各々がコア技術を持っていて、継承と進化を続けていることです。コア技術の根源をひも解いていくと、実はある中小企業さんが発祥だった。などという話があります。
なぜ、中小企業さんが多いか。小回りが利く。なんでも作ってみる、チャレンジする。価格が安い。そもそも面白い。などの理由なのでしょうね。

さて、日本の現状として、こうした中小企業さんがコア技術を持ち、設備産業を支えているのですが、彼らのアイディアというのは、マネされ放題です。
ある中小企業さんがちょっとしたアイディアを生産設備に搭載すると、それを見た別のメーカが巧みにそれをマネして、いつの間にかそのコア技術が実施できるメーカが増えるという感じです。こうして、いつの間にやらアイディアを皆で分け合っているのです。

特許を取ればいいじゃないか?

実際は、特許が取得できる技術であっても、実際に特許化して維持できないのです。また、特許侵害を発見してもそれを訴える体力もない。訴訟はお金と手間とテクニックが要ります。いちいち訴えていては会社が持ちません。
そんな背景があり、だれも自分たちのコア技術を守れない状態です。

これから先、いわゆる日本国内のマネで皆が切磋琢磨する状態ならよいのですが、世界で日本のアイディアがマネされる事態も起こっています。
どう頑張ってもこれから先、世界と競争していかざるを得ません。いろんなところで言われるように、やはり知的財産戦略を意識した設備投資というのも考えていかねばなりません。

「生産設備への投資とは」でも申し上げているように、ただ良いハードを買えばよいのではありません。その良いハードを導入する過程で必ず問題解決は存在し、その問題解決の中にアイディアが含まれます。それがコア技術であり、大切な知的財産権です。
その知的財産権をしっかり守る。もしくは、そのコア技術が誰にもマネできない。元祖の方が安くて品質が高ければ、だれもマネをしません。
いわゆる知的財産権のオープン、クローズ、基幹技術戦略をしっかり押さえるということです。

私個人的にはこれら戦略を考えて実行できるのは、中小企業さんではなく、大手機械商社さんであると考えています。豊富な資金を元に、自分たちの範疇を超えて、日本全体、そして世界に向けて、中小企業さんの知的財産権を包括的に守り、中小企業さんが安心してアイディアを発生させ、日本全体で切磋琢磨できるような状態を構築していただけたらと思います。

切磋琢磨した日本固有のアイディアを熟成させれば莫大な国益を与えます。しかし、日本は、それを登録して維持するのに膨大なお金を取ります。。。なんでもかんでも特許化では確かにそうなるでしょう。国益となりえる日本固有のアイディアをどのように発掘して守るのか。今後の日本にそれが求められていると思います。


バリデーションとは

機械加工を考えましょう。
材料を機械で削って、そのあとに既定の寸法になったかどうかを測定し、ある公差以内なら出荷し、保証する。
この場合、全ての部品を全数検査しなければ保証できないことになりますね。
測定できる場合はそれでよいとして、

あるプラスチック製品同士を超音波溶着します。この溶着が既定の強度となっているかどうかは、破壊しないと検査ができません。となると、抜き取り検査を行います。その時点でいくつかの強度不足品が出荷されるかもしれません。その時点でAQLを認めることになるのです。
製造者から言えば、1万個のうちの1つの不良かもしれません。でも、

お客様にとっては1個のうちの1つの不良。

お客様は、まぎれもなく使い物にならない不良品をつかまされます。
ものづくりを行う上で、AQLを認めたら、それはすでに一定のお客様に不良品が届くことを認めることになるのです。

しかし、これが医薬品、食品であればどうでしょうか?下手をすればその患者や使用者に多大なる危害を与えることになります。ですから、アメリカなどはFDAなどの組織を作り、どうすれば不良品を出さないものづくりが行えるかを考え続けているのです。

そんな中で出てくる概念がバリデーションです。

ものを作る過程、すなわちプロセスのばらつきをあらかじめ知り、そのばらつきの範囲が不良とされる範囲に収まっているかをあらかじめ確認します。そして、そのプロセスのばらつきが永続的に妥当な範囲に収まり続ければ、物理的に不良品が作られないという考え方です。極端な話、プロセスが充分安定していれば、無検査でもよいということです。
うまくやれば、検査代をまるまる浮かせられる効果がある考え方なのです。

しかし、それを誤ってとらえてしまっている場合がほとんどです。よくあるのは、よくわからない帳票まみれになっている状態です。ISOも同じような感じですね。