デザイン思考の罠

デザイン思考を使って新しいビジネスモデルを考えるセミナーなどが増えています。
私も何度か参加させてもらい、全く知らない様々な業種の方とコミュニケーションを取りながら、何らかの道筋を探っていくプロセスはいつも有意義です。

デザイン思考のとっかかりは「発散」と「収束」です。
「発散」とは、ブレインストーミングなどを用いて思うことを出し合い、その中から考え方の軸やグループを見つけ、そこに意識を集中してさらに発想を発散させます。
「仮設を立てる」こととは異なります。「演繹」(一定の前提から論理によって必然的な結論を導き出す)でもありません。

ふつうはこれをごっちゃにします。

また悪いことに、その思考過程でいろいろなフレームワークをハメられると、発散する範囲が狭められることを経験しました。

5W1H:いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)
4P:製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、コミュニケーション(Promotion)
3C:顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)
SWOT:強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)
ファイブフォース:既存の競合、新規参入の脅威、代替品の脅威、売り手交渉力、買い手交渉力

今までの経験、知識、想い(やりたいか)をいろいろ組み合わせて、目の前の困りごと(テーマ)に向けて、頭の中のもやもやを一生懸命言葉や文字列にしようと考えています。
そこに、そのもやもやが「だれ向けですか?」と言われた瞬間、現実世界に目を向けてしまい、「不満にはならない程度の月並みな業績※」に陥っていきます。
言い換えれば、「主観」が「客観」になると言えますね。「日本人は「主客一体」を基本とした精神」なので、こういった考え方は苦手なのかもしれません。

フレームワークはあくまで「収束」させるためのツールであり、「発散」時に使用すると、出来上がったものが非常につまらないものになります。

※スマントラ ゴシャール クリストファー・A. バートレット(1999)『個を活かす企業―自己変革を続ける組織の条件』ダイヤモンド社 315Pより引用