Archives: 2015年8月26日

問題解決の基本

問題解決にあたっては、まず問題をとらえるところから始まります。
3現主義(現場、現物、現実)が基本ですね。

現場

現場で一番大事なのは、「いつもと違うことをしていなかったか?」です。

今までは大丈夫だったのに。という場合、いつもと違うことを必ずしているか、起こっています。この場合、4M(Man,Machine,Method,Material)を基本として考えます。また、環境や雰囲気も加味して、いつもと違う変化を捉えます。
・気温・湿度
・生産設備の状況・設定・調子
・雰囲気(整然か、雑然か)
などです。

現物

よくあるのが、「不良品は捨てました。」です。不良品はとにかく取っておきましょう。不良品を観察することにより得られる情報は膨大で、かつ確固たる証拠品となります。
現物をとにかく見ます。原理原則を考えてみます。何も考えずに見ます。誰かに見せます。時間を置いてからみます。

このように視点を変えて現物を見ることで、何かが見えてきます。

とことん拡大します。当てる光を変えて見ます。
化学的に見ます。有機物か無機物か。何の原子がくっついているか。酸化物か。化学変化か。単なる混合物か。
物性変化を見ます。かたいかやわらかいか。もろいか。
良品と徹底的に比較します。化学的なところから、物理的なところまで。

現実

現場、現物の状況と原理原則に基づき、不良情報が現物に転写された過程を認知していきます。

よくやりがちな間違いは、想像と現実をごちゃまぜにすることです。

人はおうちゃくなので、ある程度目処がつくと考えるのをやめ、想像で片付ける習性があります。自分は現実でものを言っているか、想像なのかをよく考えて過程を認知していきます。
もうひとつは、原理原則を意識しないために根本原因ではなく発生原因を原因ととらえることです。
上っ面の現実をとらえてしまい、発生原因の対策を実施した結果、根本原因は解決していませんから、それを基に別の発生原因で別の不良品が発生するといった事が起こります。

仮説立証から対策

さて、この3現主義から、実際の対策を実施することを考えていくことになります。現場、現物から全ての現実を捉えられ、そこからの根本原因が明確であればよいのですが、実際はなかなかそうはなりません。たいがい、情報が一部足りない状態となります。
そこで、仮説という概念が登場します。仮説を立て、それを再現させ、実証することで、根本原因がそれである。ということを証明します。ただ、この仮説、実証サイクルも実際は膨大な費用や時間が必要となる事がほとんどです。このギャップを埋め、出来る限り真実に近い仮説を立てるところが腕の見せどころであり、知識・経験・知恵に基づくセンスが問われます。

水平展開も意識します。同様の事象が他で起こらないか。を想像力を働かせて考えます。リスクがあるならそれらも手当てします。


仕様書を書く

仕様書。おろそかにしていませんか?
「紳士協定」「言わずもがな」「あうんの呼吸」良いところもありますが、「おうちゃく」をしてはいけません。

一度、仕様書を書いてみましょう。書いて文字や図で表現することでいろいろ整理できます。

まず、発注側です。
生産設備導入の目的は何か。何を要求するのか。生産設備は何を担うか。を表現するために、必然的に整理して考えます。そして、その実現にどんな問題解決が必要か。具体的な運用はどうか。を発展して考え、文書としてまとめることになります。
それを見返すと、自分たちなりのものづくりと生産設備の目的との関係が明確になってきます。これが成熟化すると、生産設備仕様や運用方法の標準化が促されます。こうした一連のサイクルにより、ものづくりにおける付加価値が創造されます。

つぎは、受注側です。
発注側の仕様書を基に、何が求られているかを細かく知れば知るほど、どんな生産設備と運用の提供が必要なのかを考えます。さらに見積精度が上がることにより、積極的コスト低減を考えます。
このように受注側も深く考えるのですから、切り口の違った改善提案が出てくるかもしれません。

こうして、互いに仕様書を基軸として生産設備、強いてはものづくりに対してよく考えるようになるのです。この様な好循環サイクルにより、生産設備を基軸としたものづくりの付加価値が向上していきます。

生産設備導入が成熟化した企業の仕様書は、数百ページにおよぶと言われます。それだけ細かい仕様書が出せるということは、標準化が進んでいる結果です。しかし、成熟化が進みすぎると形骸化、硬直化が起こり、受注側すなわち外部からの改善の声は聞き入れられにくい状態となります。
受注側から改善案を引き出し、互いに切磋琢磨する環境を作りあげるぐらいの仕様書の表現がポイントです。

このように、発注側が「標準品を頼むだけ」でもダメですし、受注側が「言われた物を作るだけ」でもダメです。
互いの知識・知恵・経験を持ちこみ、ものづくりにおける付加価値を高めなければ、次のステージに行くことはできません。

投資機会というのは、発注側も受注側も、ものづくりにおける付加価値を高める絶好の機会です。

「そんな仕様書いらないよ。リピート品だから。」と言わないでください。少しだけ改善してみてください。それによる問題解決により、互いにものづくりにおける付加価値を高めあうことが出来ます。

経験上、仕様書には以下の項目は書いた方が良いと思います。
1)構成

どの様な設備で全体ラインを構成するか。

2)目的

なぜ、この設備が要るのか。

3)能力 不良率

どの程度の能力か。不良率は。AOLは許されるのか。

4)設置場所

何階に置くかだけで、構想は変わってきます(床耐荷重)。どのように搬入するかで大きさが変わってきます。

5)資材

どの様なパッケージを使うか。取扱が難しい材料はあるかなど。

6)共通仕様

決まったボタン配置、画面仕様など。その他、標準化された仕様。

7)個別機器仕様

どの様に動くことが好ましいか。手動動作。バッファ量の程度。どの様に材料を投入するか。

8)運用シミュレート

誰がどの様にオペレートするか。

9)設備構成

全体をどう動かすか。止める順番は。非常時の止め方は。復帰運転順は?

10)具体的運用(標準化された運用)

立ち上げから運転片付けまでの手順
生産情報の取得方法
非常停止からの復帰方法
連続運転かどうか。昼休みに止める。24hr操業など。

11)関連法令・グレード

食品グレードか、医療グレードか、それ以外か

12)検収条件

設置して動けば良いのか。量産3ロット合格か。

13)支給品

発注側から何を支給するか。それは有償か。

仕様書は、契約です。全てが必ずうまくいくとも限りません。そこで判定(ジャッジ)のよりどころになるのは仕様書です。何を作らせようとしたのか、何を作ろうとしたのかが第三者に出来る仕様書があれば、判定は明確です。


レイアウトとシミュレーション

能力と大きさが決まったら、人、物の動線、設置場所を考慮した、レイアウトを考えます。そして、材料投入から生産設備を使って製造し、出来た商品を出荷するまでのシミュレーションを行います。ポイントは以下の通りです。

レイアウト
生産設備の設置場所は有限でかつ制限があります。設置場所に柱があったり、出入り口は固定されています。材料や製品はどちらから入ってどちらから出るのが効率的か、製品はライン正面から向かって右に流すか、左に流すか。通常は日本人は右利きが多いので右に流しますね。(私は左利き。。。)
また、平面と限らず、立面で考えた方が良い場合があります。大型でプラントに近いようなラインの場合、

立面を考慮したレイアウトの善し悪しが、ランニングコストに影響します。

例えば、液体商品の製造です。平面でなく立面で考え、重力をうまく使うのです。原料を上から投入して、下にさがるに従い製品が出来上がる。そうすることで、無駄な送液などのエネルギーを削減出来ます。送液管の液溜まり(デッドボリューム)を削減できます。ただ、重力ばかりに気を取られると人が上下に移動せねばならない事態が起こります。このあたりのパランスを基本設計におけるシミュレートによって決めます。
このように、自然の摂理を利用すると生産設備の構成機器が減りコスト削減、さらに構成のシンプル化による品質向上が達成出来る場合があります。

バッファ量
効率的に生産設備を回すことを考えると、各材料や消耗材のバッファ量が多ければ良いということにはなりません。生産の最初にバッファにたくさんためる作業を行ったら、その時間は設備が動いていない。言いかえれば商品が作られていないため無駄な時間になります。
通常、材料投入では、各材料投入部へ人が周回する方法がとられますが、その場合、その周回サイクルに応じた必要最小限のバッファで生産設備を動かすことを考慮します。

動線
バッチ生産は、製品を作る手順に生産設備を並べる(フローショップレイアウト)方式が一般的です。これは、人が中心で生産設備が周りにあり、人がくるっと一周すると製品が出来るようなレイアウトです。
連続生産は、上のバッファ量で述べた通り、人が周回するすなわちU字のレイアウトが良い気がしますが、実はそこに落とし穴があります。

連続生産で大切なのは生産設備を止めないことです。

製品形状によりますが、物の動線を曲げると搬送で引っかかったりするのです。そうなるとかえって稼働率が落ちます。

シミュレート
レイアウト、バッファ量、人物動線が決まったら、シミュレートを行って、人と生産設備の稼働状態を確認します。通常、「標準作業組合せ表」などを用い、人と生産設備の関係を知り、無駄な動きが互いにないか確認します。人の稼働率は、100%にしてしまったらトイレに行く時間も無くなってしまうので、通常70%程度を狙います。生産設備は理想の100%を狙います。
ここでは、

人と生産設備が付加価値を生む作業を意識すること

が、もっとも大事なポイントです。
よく分からないが、人も生産設備もよく動いているから稼働率が高いと考えてはいけません。付加価値を生む作業時間。下の図に示す主作業の割合を高くし、かつ質を上げます。その他の作業や時間は全て無駄と考えるのです。
主作業とは、「付加価値を創出する作業」です。具体的には設計情報に基づいて、材料を変形、変質、変態させるような作業で、設計情報を材料(メディア)に転写する作業とも言えます。
人でも生産設備でもこの付加価値を生む作業を意識することで、いろいろな無駄が見えてきます。
人であれば、意外とリワークや検査が多いとか、生産設備であればタクトタイムは早いのだが、その内訳がほとんど搬送だったなどです。

 

労働時間(就業時間)
実働時間(実働作業) 休憩
直接作業 間接作業
主体作業 準備・片付け
主作業 付随作業

直接作業:作業指示オーダーが出ている作業
間接作業:朝礼、教育、事務作業、清掃、手待ち、無作業
主体作業:作業指示の生産個数分繰り返す
準備・片付け:通常、作業指示オーダーで一回
主作業:付加価値を創出する(材料を変形、変質、変態させる)作業
付随作業:治具、材料の取り置き、ワーク脱着、寸法検査