Archives: 2015年10月18日

DR(デザインレビュー)する

デザインレビュー。
デザイン(Design)は、「設計」という意味です。
レビュー(Review)は、「批評する」「再調査する」「よく調べる」「反省する」「回想する」という意味です。

JIS Q 9001(ISO 9001)では、設計・開発のレビューとして、以下の通り、規定されています。以下、ISO9001:2008(JIS Q 9001:2008) 本文抜粋

7.3.4 設計・開発のレビュー
設計・開発の適切な段階において、次の事項を目的として、計画されたとおりに(7.3.1参照)体系的なレビューを行わなければならない。
a) 設計・開発の結果が要求事項を満たせるかどうかを評価する。
b) 問題を明確にし、必要な処置を提案する。

そして、ISO9001では、「レビュー」「検証」「妥当性の確認」が区別され、7.3.5 検証、7.3.6 妥当性確認として、7.3.4 設計・開発のレビューとは別に規定されています。

設備投資においては、具体的に以下のような事を実施します。

a) 設計・開発の結果が要求事項を満たせるかどうかを評価する。
仕様書を作るところで考えた要求事項が実際の設備設計段階で実現できるのかどうかを確認します。

例えば、要求仕様書にある要求事項の1つ1つを箇条書きにして、実際の設計に反映されているかどうかをチェックしていきます。抜け漏れがあれば、それを設計に反映させるべく考えます。
本来は、要求事項のさらなる上流である、顧客のニーズや類似商品の問題点などが設計・開発段階で要求事項として含まれているかをトレーサブルにしていきます。

b)で問題を明確にし、必要な処置を提案する。
問題を明確にする。これを実際にものづくりを行う前に実施します。構想や図面が出来た段階で、設備のライフサイクルをイメージし、設計者、製作者、使用者が集まり、この設備を実際どの様に作って設置し、どの様に動かして使って、保守して、捨てるのかをシミュレートします。
ものを作る上でなぜそのような設計や運用を考えたのか。そこには必ず理由があります。
無駄な動きはないか。安全性に問題はないか。非常停止後の復帰は。油が製品に落ちないか。摩耗粉などが落ちないか。
図面というバーチャルな段階で事前にリスク(重大度×頻度×回避可能性)を定量的に算出し、優先順位を決定しながら、具体的処置を決めます。

レビュー(Review)は、「見直し」の意味が含まれており、「必要なら変える」ということを意味します。

実物が出来てしまうと変えることは大変です。図面というバーチャルな段階でのレビューは、設備のQCDのほとんどを担う非常に大切なプロセスです。


GVP GQP GMP QMS

製造販売業が遵守する省令

・GVP省令(Good Vigilance Practice)
「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の製造販売後安全管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第135号)
・GQP省令(Good Quality Practice)
「医薬品、医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品の品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第136号)

そして、GQP省令では、医薬品等について市場に対し最終的責任を有する製造販売業者が、製造所のGMP/QMS省令の遵守を監督すること等を定めています。

製造所が遵守する省令

・GMP省令(Good Manufacturing Practice)
「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第179号)
・QMS省令(Quality Management System)
「医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成16年厚生労働省令第169号)
・GCTP 省令(Good Gene, Cellular, and Tissue-based Products Manufacturing Practice)
「再生医療等製品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(平成26年厚生労働省令第93号)

そして、GMP/QMS省令は、ISO13485に準拠しています。

旧法:「薬事法」(昭和36年法律第145号)
新法:「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」
施行令:「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令」(昭和36年政令第11号)
施行規則:「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則」(昭和36年厚生省令第1号)

製造販売業 GVP省令(Good Vigilance Practice) /GQP省令(Good Quality Practice)
製造所 医薬品 医薬部外品 化粧品 医療機器 体外診断用医薬品
GMP省令(Good Manufacturing Practice) 自主規制GMP QMS省令(Quality Management System)

知識の創造

「知識とイノベーション」でイノベーションを起こすには、知識の創造が求められると述べました。

知識とはどの様に創造されるのでしょうか。

知識創造は2つのサイクルの相互作用により創造されると考えられます。
1つは「今」「現実」で創造する<見えるサイクル>
もうひとつは「信念」「真実」で創造する<見えないサイクル>です。

knowledge
<見えるサイクル>
「今」「現実」で創造する知識
・共同化
相互作用の「場」、共感知
・表出化
有意義な「対話すなわち共同思考」、概念知
・連結化
知識を結合する、体系知
・内面化
行動による学習、操作知

<見えないサイクル>
個人の「信念」を、人間によって「真実」へと正当化し創造する知識
・知識の移転(現象経験)
境界を越えて受け取り、自由に応用する自律性
・仮説の発見
個人の持つ暗黙知、様々な「情報」と深い考察による
・コンセプトの創造(概念化)
比喩的言語を多用する
・コンセプトの正当化
信念を正当化(認めてもらう)知識は正当化された真なる信念
・原型の構築(モデル)
因果関係を明確化、構造化する
個人間、部門間の協力を促す道具とする
・科学による真実の探求
原型構築の結果から真実を究める

これが、知識の創造する過程と考えられます。

それでは、知識の創造における日本人の強みとは何でしょうか。

日本人には神がいません(無です)。これは、大きな特性であり諸外国には無い強みです。

簡単に言い換えますと、「主客一体」を基本とした精神と言えます。

主客一体
西洋思想は主体と客体が別です。
つまり、主体は、動作・作用を他に及ぼす存在としての人間であり、行為・実践をなす当のもの。 客体は、行為・実践の対象となるもの。
では、人間が及ぼしたとは考えられない事柄、運命とか天災の主体は?これは神ということです。神は全知全能であると考えます。

日本人の思考は、人間含めたすべての一体化が重要な特徴です。
日本人は「もの」に対して、形なきものの形を見、声なきものの声を聞く精神があります。
「これぞそのものだ」「ほんものだ」「そういうものだ」「ものの気」「ものの気配」

日本語の「もの」という言葉は、物体や物理的存在だけを表すだけでなく、多様でかつ、独特の深みを持っています。
例えば、さくらが咲いて散る。さくらが咲いて、物的な存在としている背後に、いずれ散り、消えてなくなる「消滅」という宿命が暗示されるがゆえに、そこに「もの」の独自の美を見いだし、そして、いとおしく思います。

そして、「時」とも一体化します。
西洋は過去、現在、未来を意識します。言葉の時制がはっきりしています。日本語ははっきりとした時制がなく、時間軸が固定していません。
伝統の精神。「今」を生きる私には先ほどすでに過去となった「時」が記憶として、経験として残っている。そして、将来が目の前にくる。

心身一如
日本人の知識とは、全人格の一部として獲得された知恵。間接的・抽象的知識よりも、個人的・身体的な経験を重視します。伝統や職人気質などですね。
近代の以前で長い歴史のある「武士道」。その教育で最も重視されたのは人格をはぐくむこと。思慮、知性、弁論などは重視されなかったそうで、「行動の人」であることが重要視されました。
この様な行動・実践による身体的経験を、西田幾多郎は、「純粋経験」と言いました。

『なんと美しい花だ。花を見た一瞬、アッと息をのんだ時、私は確かにある経験をしています。しかし、この時には、「私はいま桜を見ている」ということさえもできません。「きれいな花だな」と考えたりもしません。そんな認識はないのです。そこには「私」もなければ、「桜」もありません。いわば両者が融合したような経験だけがあるのです。』

ものを考えている脳が、考えている「私」について考える事ができない。「経験」を得ているときは、主体も客体も無いわけです(主客一体)。

自他統一
日本人は人間集合を有機的生命体とみなし、他人との関係において自己を表現します。現実を典型的には、自然や他者との物理的な相互作用の中にみます。

冗長性
日本の組織のもっとも著しい特徴は、情報冗長性を重視しているところです。
情報冗長性とは、情報を意図的に重複共有させることをいいます。互いの知識領域に「侵入することによる学習」をもたらします。
たとえば、階層組織外にある非公式コミュニケーションの構築を助けます。
そして、個人は組織における自分の位置を知り、個人が組織全体の方向に合うように自己を制御することを助けます。

主客一体の概念知として私が印象的なのは、「人馬一体」です。日本人の精神と見事に一致したコンセプトだと思います。
そこにいけば、「純粋経験」が出来るのではないでしょうか。

<参考書籍>
・野中郁次郎 竹内弘高 梅本勝博 (翻訳)(1996)『知識創造企業』東洋経済新報社 401P
・野中郁次郎 紺野登(2003)『知識創造の方法論―ナレッジワーカーの作法』 東洋経済新報社 292P
・佐伯啓思(2014)『西田幾多郎 無私の思想と日本人』新潮新書 256P